手動運転補助装置とは足の不自由な方が、手で車を運転するための装置です。
弊社がメインで販売しているハンドコントロールもその一つです。
こちらのブログでは車の手動運転補助装置について、その他の製品との比較も含めてご紹介させていただきます。
目次
1 手動運転装置の歴史
2 ライフスタイルに合わせた脱着可能な手動運転装置の登場
3 ハンドコントロールとその他手動運転装置国内製品の比較(脱着可能な装置)
4 手動運転装置開発者・創業者の共通点
4-1 株式会社今野製作所
4-2 有限会社フジオート
4-3 旧株式会社ニッシン自動車工業
4-4 株式会社ニコ・ドライブ
5 まとめ
1 手動運転装置の歴史
車いす利用者など下肢に障害をお持ちの方が利用する自動車運転補助装置は、運転席フロアに固定するタイプが常識
長い歴史を持つ日本の運転補助装置メーカー
自動車を運転するための補助装置といえば、日本では、ミクニオートライフさま(旧名:株式会社ニッシン自動車工業さま)や、フジオートさま(フジコンの愛称で親しまれている)の装置が有名です。
この記事をご覧のほとんどの方が、その名前をご存知なのではないでしょうか。
ニッシン自動車工業さまは昭和48年に看板製品である「APドライブ」を開発。
フジオートさまは、昭和29年に手動装置の開発に着手されています。 昭和29年といえば60年以上も前のことです。
どちらのメーカーさまも障害をお持ちの方の運転を長きに渡ってサポートをされてきた、運転補助装置の立役者と言えるでしょう。
2 ライフスタイルに合わせた脱着可能な手動運転装置の登場
フロアではなく、ペダルに固定する新しいタイプの装置の登場
自動車本体に対して加工をしたり構造変更等を施さず、直接ペダルに取付けるタイプの手動運転装置は比較的新しいです。
株式会社今野製作所さまのSWORD(ソード)は2009年に正式販売を開始。弊社ニコ・ドライブも現在の製品の前身となるモデルを2013年に販売開始しています。
前述のフロアへ固定するタイプのメーカーさまの装置は、自動車を預けて専門の方々に施工をしていただく必要があるため、株式会社ニコ・ドライブでは購入方法や納期などに関する質問をよく頂戴しています。
固定型も脱着可能型もどちらにも利点があり、お客様ご自身に合う手動運転装置をお選びいただくことが重要となります。
例えばライフスタイル、障害の程度、操作感、ご予算など、ご自身で「何が一番必要なのか、優先順位を決めていただく」ことも大切です。
そこで、取り付け・取り外しができる脱着可能な手動運転補助装置、弊社のハンドコントロールと今野製作所さまのSWORD(ソード)について、ホームページに掲載されている情報を比較してみました。
皆様のライフスタイルや自動車の使い方に合った装置選びの一助になれば幸いです。
3 ハンドコントロールとSWORDの比較(脱着可能な装置)
ハンドコントロール(ND-2020)とSWORDの比較表
ND-2020 | SWORD | |
---|---|---|
製造販売元 | 株式会社ニコ・ドライブ 「移動格差の解消」を理念とし、手動装置ハンドコントロールの製造・販売を中心とし、バリアフリー運転事業を営む企業 |
株式会社今野製作所 イーグル油圧ジャッキの製造販売、ステンレス板金加工を主力事業にしている、ものづくり企業 |
WEB | 株式会社ニコ・ドライブホームページ | 株式会社今野製作所SWORDホームページ |
取付可能な車 | ハイエース・キャラバン・ボンゴ等の商用車両、スマート(ダイムラー)・Q5(アウディ)等の装着部裏面が斜めの一部車種を除く、ほぼすべてのオートマ自動車 | ※今野製作所さまへお問い合わせください |
製品仕様 | ■本体 使用時サイズ:横34cm×長さ65cm 収納時サイズ:横21cm×長さ52cm 重量:約900g ■別売りオプション ・旋回装置ハンドルスピンナー ・ハンドパーキングブレーキ(足踏式パーキングブレーキ車に併用を推奨) ・サイドスポイラーカバー ・専用キャリーバッグ |
■セット内容 SWORD(ソード)本体 本体取付専用工具 ※全長600mm、重量2.5kg ■別売りオプション ・旋回ノブ ・キャリーバッグ |
便利な場面 | ・自動車販売店での試乗、旅行先でのレンタカー利用、車検や事故、板金修理等での代車利用など、多くの場面でご活用可能。 ・押すとブレーキ、引くとアクセルを簡単に操作できる。 ・約900gと非常に軽量で折りたたみ可能なため、持ち運びも楽。 ・自動車購入時、販売店での試乗、旅行先でのレンタカー利用できる。 ・車検や事故、故障時の代車利用など、多くの場面で利用できる。 |
・家族と車をシェアしたい ・時々運転したくなるんです ・社用車を運転したい ・旅行先で、車を借りて移動したい 「こんな人に使ってほしい」から抜粋しています。ぜひホームページをご覧ください。 |
取付方法 | ・アクセルペダルとブレーキペダルに取り付け。 ・初めて利用される方でも5分程度。 ・取り外し可能。 |
1.固定ネジを緩める 2.リンクを平行にする 3.アクセルペダルに装置を通す 4.ブレーキペダルに装置を引っ掛ける 5.アクセルクランパーを締め付ける 6.ブレーキホルダーを締め付ける 7.取り付け確認 |
操作方法 | 押してブレーキ 引いてアクセル |
・アクセリング 人差し指・中指・薬指の3本を、グリップ前面の突起部分に引っかけるような形でグリップを手前に引く。グリップを手前に引く量でスピードが調節。 ・ブレーキング 手のひらの付け根部分をグリップ背面の突起部分に押しあてるような形で、グリップを前面に押し込む。 ・ブレーキロック グリップを押し込んでブレーキをかけた状態で、グリップを左右どちらかにひねる。 |
購入方法 | ・公式通販サイトで必要事項を入力し決済 ・決済方法はクレジットカード(VISA、Master、American Express)、銀行振込、代金引換、オリコローンが利用可能 ・障害者手帳持参の方は補助金申請が利用できる可能性あり ・電話でのお問合せ、自動車と同時購入の際の注文も可 |
1. 今野製作所さまへお問合せください 2. 「フィッティング」実施(不要な場合は次へ) 3. 御見積り 4. ご注文 5. ご入金(お振込み) 6.出荷~納品 |
価格 | 108,000円(税込・送料別) | 196,560円(税込・送料別) |
納期 | ご入金確認後の翌営業日出荷、最短翌日到着 (北海道・九州・沖縄は到着まで約2日) | ご注文から2~4週間で出荷。 |
製品保証 | 1年保証 代機サポート | 2年保証 |
実物を見る | ・本社での無料運転体験サービス ・1泊2日お試し宅配便サービス(有料) ・パートナー店舗(無料:同時に車を購入予定の方優先でお試し可能) ・自動車教習所(有料) |
購入前のお試しフィッティング ご購入前にSWORD(ソード)とお客様のお身体・お車との相性をご確認いただくための7日間の有料お試しサービス。 「操作性が、自分の身体条件に適合しているだろうか?」 「自分の車にマッチしているだろうか?」など、購入前の不安や疑問を解消していただくためにご利用くいただける。 |
運転免許 | ・ハンドコントロールに限らず手動運転補助装置は、足に障がいをお持ちの方、足に不自由がある方が自動車を運転するためのもの。 ・すでに普通免許をお持ちの方であればどなたでもご利用可能。一時的なケガや病気の方はもちろん、障害のある方は「アクセル、ブレーキは手動式に限る」「オートマチック車限定」等記述のある方もご利用可能。 ・障害のある方でこれから免許を取得されたい方は、ハンドコントロールを購入し、日本全国の全ての教習所に持ち込みいただき教習を受けることが可能。※正式名称「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」より ・障害のある方でハンドコントロールを購入せず免許取得をされたい場合はハンドコントロール設置教習所を利用できる。 ハンドコントロール設置の全国の教習所 |
※今野製作所さまへお問い合わせください |
自動車検査 | ハンドコントロールを装着した自動車は自動車検査対応。 ※自動車検査時には「構造装置の軽微な変更」に該当する指定部品です。 | ※今野製作所さまへお問い合わせください |
メンテナンス | 製品の保証期間終了後も安心して長くお使いいただくため、お買い上げ日から1年毎に1度の定期点検を推奨しております。 □料金について 【基本料金】3,240円(税込)+【往復送料】+【技術料・部品代】 部品交換代金や作業料など、追加料金が発生する場合には、確認のご連絡を差し上げます。 往復送料はお客様負担となりますので、予めご了承ください。 |
ご購入から2年での定期メンテナンスを推奨いたします。 SWORD本体をメンテナンスチームの専門技術スタッフが分解しパーツ洗浄とグリスアップ、消耗部品の交換を致します。 初回:メンテナンスは無料にてお受け致します。(往復の送料のみご負担ください。) ※二回目以降:修理基本価格\10,000+往復の送料となります。 ※メインロッドや、コア部品の交換などが必要な場合は事前にご連絡をして別途お見積りとなります。 |
参考記事 | 【インプレッション】BMW「i3」+ニコ・ドライブ「ハンドコントロール」 / – Car Watch | 『カオスだもんね!』たった5分で着脱可能!足が不自由でも色々な車を運転できる装置を体験!! – 週刊アスキー |
※詳細な説明や製品の写真などはそれぞれのホームページでご確認ください。
4 手動運転装置開発者・創業者の共通点
4-1 株式会社今野製作所
SWORDの開発をされた落合さんが、下肢に障害をお持ちであることはあまり知られていないかもしれません。
「ーーーそれは、車いすに乗った、ひとりの人物との出会いでした。
SWORD(ソード)の考案者は、障がい者向けの住宅改修工事、福祉機器の企画開発を行うあい・あーる・けあ(株)の経営者で、自身も下肢に障がいを持つ落合克良氏です。
2000年に開催されていた、中小企業向けのとある展示会で、「福祉用具を開発しているので手伝ってほしい」と声をかけてきたその人が、落合氏でした。
昭和22年生まれの落合氏は、3歳で脊椎カリエスを発症、障がいを得ますが、16歳のとき、下肢障がい者のための自動車運転装置開発のパイオニア、藤森善一氏からかけられた、「君にだって大丈夫だと」いう言葉に希望がわき、18歳で免許を取得したそうです。
日本がまだ貧しい時代、日本中の若者がマイカーでのドライブに憧れた時代でもあります。
福祉用具をユーザの目線「1mの高さから」考え、多くの製品を生み出したアイデアマンの落合氏は、遠出も厭わないドライバーでもありました。それだけに、運転できるのが専用の改造車に限られることでの制約を、長年歯がゆく感じていました。
「なぜ、レンタカーという公共の道具を障がい者が使えないのか。免許がとれるということは運転できるということだからおかしいだろう」
「会社の営業車、出張先でのレンタカー、教習車、車検時の代車なども手で運転できるようになればどんなにいいか」との思いを募らせた落合氏は、着脱式の手動運転装置の構想を抱きます。いつか同僚や友人に、「運転を交代するよ!」と言える日を夢見ていたのです。」
(後略)考案者の声|SWORD(ソード)|手動運転装置|株式会社今野製作所ブランドストーリーより引用
4-2 有限会社フジオート
さかのぼると、実はフジオートを創業された藤森さんも下肢障害者。もともとはタクシードライバーで、交通事故をきっかけに両足に障害を持ったそうです。
有限会社フジオート 故 藤森善一 氏
「路肩で車を修理中、居眠り運転の車に激突されて重傷を負い、両足を失いました。(中略)バス、運送会社のトラック、郵便逓送、タクシーと昭和11年の免許取得以来、自動車の運転に関わる仕事ばかりをやってきた藤森にとって、どうしても自動車の運転に関わる仕事がしたかったのでしょう、昭和29年6 月自動車運転に挑戦しました。
当時はクラッチ車しかありませんでしたので、アクセル・ブレーキ・クラッチペダルを足で操作しながら、ハンドルとシフトレバーを両手で操作できなければ運転はできません。両足がない藤森は譲り受けたダッジブラザーズを改造、右手でクラッチとブレーキ、残っていた太ももでアクセルを踏む装置を考案しました。」
藤森式自動車運転装置研究所 フジオートホームページより引用
4-3 旧株式会社ニッシン自動車工業
ニッシン自動車工業の会長亀田藤雄氏も、仕事中の事故で脊髄を損傷したため、下半身不随の車いす生活となったそうです。
旧株式会社ニッシン自動車工業 会長 亀田藤雄氏
「事業の始まりは、仕事中の事故で脊髄を損傷し、下半身不随の車いす生活となった亀田藤雄さま(当時会長)が、「社会復帰のために自動車の運転が必要である」と考えたことから。 当時の運転装置は使い勝手が良くなく、激しい疲労感を生むため、長距離運転には適していませんでした。
そこで、整備士の経験を生かして、より性能の良い運転装置を作り始めたところ、同じリハビリ施設の仲間に伝わり「自分も同じモノを作ってほしい」と頼まれるようになりました。1973年に陸運局からAP車(手動式運転装置車)の認可を受けて会社を立ち上げました。」
障害者・高齢者に役立つポータルサイト ゆうゆうゆう 株式会社ニッシン自動車工業より引用
4-4 株式会社ニコ・ドライブ
弊社の代表、神村も16歳の時に交通事故で脊髄を損傷し、下肢に障害を持ちました。
株式会社ニコ・ドライブ 代表取締役 神村浩平
「もうこれやって、これで生きていこう。これを広めることで自分の人生を使いたいと直感で思った。」
「車を買って出かけてみようかな、仕事をしてみようかなというきっかけになる。売っているのは、ただのアルミのパイプだが、その先の人生の広がりや人生を楽しんでもらえる。そういう可能性を広げられるものではないかなと思う。」
“自動車の運転を多くの人に” – NHKニュースウォッチ9より
5 まとめ
自分のライフスタイルや自動車の使い方に合った装置選びを
最近は、若者のクルマ離れ、という言葉をよく耳にするようになりましたね。
カーシェアサービスや格安レンタカーが確実に増えてきており、運転免許さえあれば、自動車に乗る方法は昔よりも選べるようになっています。
特に公共交通機関が発達している大都市圏では、自動車を所有するという考え方がなくなっていくのかもしれません。時代の変化に合わせて、自動車の乗り方と同様に、運転補助装置も選べる時代になったということだと思います。
時代が変わっても、すべてのメーカーの出発の想い、信念は変わりません。
開発者・創業者であるご自身はもちろん、その周りにいる同じ環境の方々のための装置なのですね。
手動運転装置は足の不自由な方のライフスタイルや、ご希望、障害や病気、ケガの状態に合わせて様々な種類を選択できる、「移動するための選択肢が増える」それが開発された皆様の社会に対する願いなのだと信じています。
私もニコ・ドライブで手動装置の製造・販売に携わり時間が経ちますが、神村の明確な信念に共感しています。
自動車の運転から生じる外出が、仕事をはじめとした社会参加のきっかけになり、その人の人生を大きく変えていくはずだ!という神村の信念に基づいて、株式会社ニコ・ドライブは成り立っています。
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